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はじめに
我々の日常業務の中で、外部委託(物品の調達、検査依頼、入金、支払いなど)においてはそれらのほとんどが電子化されている。
例えば、問屋の「クラヤ三星堂」などでは、各医院に端末を貸し出し「バーコード注文」が主流となり、口頭での依頼は「注文忘れ」を電話や配達時に担当者に依頼する程度に減少している。検査依頼では、ずっと以前より項目のチェック方式が採用されており、希望すれば紙とフロッピーディスクとの二重に結果が返却される体制ができている。入金、支払いなど銀行業務は当然であるが、24時間コンビニでの支払いも可能になってきている。
この様に、周囲の電子化の波が押し寄せる中で、平成21年にはレセプトの電算化が決定しており、開業医も静観していられない時期がきている。
編集委員会では、医院の電子化に積極的に取り組んでいる先生方のお話を伺い、電子化を検討している先生方に少しでも参考になればとの思いで、今回、「電子カルテ特集私はこうしている」を企画した。
レセプトの電算
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レセプトの電算化とは、平成21年4月実施が確定しているレセプトの「オンライン」1)および、その前準備段階であるFD(フロッピーディスク)やCD(コンパクトディスク)などでレセコン(レセプトコンピューター)を設定し、レセプトを提出することである。実施まで1年に迫った今、FD、CDを省略し、いきなりインターネット回線使用による電算化を検討している医院もあると思われる。今回は、「レセプトの電算化」についての詳しい内容は、各医師会にお任せすることとし、「電子カルテ」のみに特化して検証した。
電子カルテ
ここで、認識を新たにしておいていただきたいのは、レセプトの電算化と「電子カルテ」とは厳密には別のことである。著者は、今まで開業医の先生方といろいろ話をする機会を持ったが、「レセプトの電算化」=「電子カルテ」と混同している先生が実に多くいるように思う。これは、「電子カルテ」と「レセコン」が1台のマシーンに同居しているものが多いからと思われる。「電子カルテ」には、1)「電子カルテ」と「レセコン」が1台のマシーンに同居しているタイプの「一体型」と2)「電子カルテ」だけで、「レセコン」部分はレセコン専用コンピューターに接続して使用するタイプの「分離型」とがある。「電子カルテ」は「紙カルテ」の表紙と表書き部分、「レセコン」は「紙カルテ」の表紙と裏書の点数計算部分と考えれば判りやすい。「電子カルテ」と「レセコン」は共に、「紙カルテ」の表紙部分、すなわち、患者番号、氏名などの患者情報および保険情報などを共通の情報として両者を一元管理している。よって、「電子カルテ」は基本的に従来の「紙カルテ」と同じものなので、2年に一度の保険改正に影響されることは無い。影響を受けるのは「電子カルテ」内の「レセコン機能」部分だけである。実際著者は「分離型」の「電子カルテ」を使用して2年になる。機能向上のためのバージョンアップが3回あったが、何れもユーザーネットワーク上でメールにより改善希望していたものがメーカーにより実施されたものである.方法もインターネットで5分程の操作で済んでしまった.すなわち「電子カルテ」は導入し軌道に乗せてしまえば、「紙カルテ」と同じ扱いで済むものである。
現在、開業診療所約99,500医療機関3)の内、約80%が「レセコン」にて保険請求をしている。「電子カルテ」はというと15%に満たないのが現状と思われる.しかしながら、新規開業の80%は「電子カルテ」導入を検討しているとの報告2)もあり、10〜20年の後には50%を超えることが推測される状況にある。
何故、電子カルテを導入するのか
その理由は、各医療機関によりそれぞれ異なると思われる。新規開業医院では、金銭的、年齢的理由を除いては、「電子カルテ」を導入しない大きな理由は見つからない。逆に、すでに開業している医院では、何か明確な理由が無い限り導入に踏み切るのは現状では難しい。すなわち、
1.すでにある「紙カルテ」をどの様に扱うか
2.それなりの費用を掛けるメリットがあるか
3.コンピューターに詳しくない場合「電子カルテ」の維持、管理はできるのか
など、負の理由が多数あるからである。
今や、医療器械の展示会を見ても、「レセコン」単独での販売は少数派になりつつある、販売コーナーの面積からも、レセコンメーカーが力を入れているのが、「一体型」の「電子カルテ」であることが判る。そこで、新規開業においては、最低限必要である「レセコン」を選択するときに、一体型の「電子カルテ」を選択するのは自然である。金銭的理由以外では、「レセコン」単体を選択する理由は無いのではないかと思われる。資料によれば新規開業においては、機種の選択が自由である為3〜4種類のデモ機を経験し導入成立の割合も高くなっている2)
一方、既存の開業医院では、「電子カルテ」の多くが「レセコンー体型」である為、「レセコン」の買い替え時に「電子カルテ」の導入が検討される機会となっていると予想される。著者はかつて、「レセコン」の買い替え時に他社製品の「レセコン」を導入したため、データの移行費用、職員の訓練など、大変な苦労を経験した。よって、既存の医療機関では「レセコン」のみを他社製品に代える可能性は低いと思われる。よって、「レセコン」に同梱された「電子カルテ」がユーザーにとって使い易いかどうかが大きな検討課題となる。次に、既存の紙カルテをどのようにするか、診療しながらの導入をどうするかなど問題は多い。それらを解決できる見込みが立ったときに始めて、「電子カルテ」導入に至るのであろう。
全国約99,500医療機関3)のうち、約9,900医療機関に導入されている。データを公表しないメーカーも考慮すれば10、000医療機関程度となり約10%である(表1)。著者の所属する杉並区医師会は10組に分かれているが、そのうちの1組、48施設のうち判っているだけで3施設、6%であり、全国10%は実数に近い数字と思われる。
県別の実数では、東京が1,500件と多い。しかし、割合でみると各県とも5%〜13%の範囲に入り都会で多いとか、地方だから少ないなどの傾向は見られない。特に、富山、滋賀、鹿児島沖縄県での浸透が目立つ。逆に、和歌山、佐賀県では5%台と低い(図1)。
蓮沼の報告によれば、東京都医師会A会員に対する調査で、2003年189件(6.8%)から2007年733件(18.7%)と5年間で実に3.9倍の増加がみられている4)。
各科別では、やはり、内科が約6,000件以上の施設と圧倒的に多い。これは、内科標榜医院が約63、000件(表2)5)と多いためである。
皮膚科での導入状況は、約12、800施設(表2)5)中約460施設である(表1)。これは、皮膚科全施設の3.6%に当たる。県別の全電子カルテ導入数の中で皮膚科診療所の割合を見ると、鳥取、熊本県で10%を超える以外は5%に満たない県が多い。皮膚科の中では、まだまだ、「電子カルテ」の認知度は低い(図2)。
約30機種ある「電子カルテ」の中で、主にどの機種が選択されているのであろうか。〈全診療科〉と〈皮膚科〉において別々に集計して見たのが図3および図4である。どちらも、上位6機種は同じ顔ぶれで約80%を占めている。導入費用は「レセコン」一体型だと約400万円、「レセコン」分離型だと300万円前後の機種がでている。過去3年問「電子カルテ」の展示場6)などに通ってみた経験では、年々、値段を安く設定した機種を出してきているように思われる。以前よりは、50万円程安くなっているのではないか。因みに著者のNTT東日本社製、「FutureClinic21」は270万円からのプランが出ている。更に安価なものでは、ダイナミクスやドクターソフトなどがある。2年前のやや古い情報で恐縮だが、ダイナミクスは約50万円で、ドクターソフトは250万円程度であったと思う。しかし、これらはコンピューターの知識がやや必要とされると思う。
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図3 〈全診療科目〉電子カルテ機種別 % |
図4 〈皮膚科〉電子カルテ機種別 % |
まとめ
内科標榜診療所が圧倒的に多い為メーカーは内科を販売対象として「電子カルテ」を生産してきた。この傾向は今後も続くと思われる。その中で、皮膚科医院として、日常診療に近い仕事ができる機種を選択して行くことになる。「電子カルテ」導入を検討した時、既存の「レセコン」を他の機種に変更することは非常に大きな負担を抱えることになる。よって、「電子カルテ」は「レセコン」と同じメーカーの「一体型」のものを選択せざるを得ないかもしれない。現時点で皮膚科に導入されている「電子カルテ」の多くの機種は、「レセコン」一体型である。
著者は、将来の「レセコン」の買い替え負担を軽くする目的で、まず、「レセコン」を「オルカ」に変更することを決めた。その上で、「電子カルテ」の選考に当たった。「オルカ」と繋がる「電子カルテ」は判っているだけで「Doctor'sDeskH」、「FutureClinic21」、「RACCO」、「ドクターペンライト」などがある。「電子カルテ」をとりまく環境も次第に充実してきている。例えば、予約管理システム、画像管理システムなどはすでに実用化されている。また、将来的には、盗難医院の火災、天災などによるカルテの喪失に備え、銀行の金庫のような所に巨大サーバーをおいてデータのバックアップ管理をするような構想も期待される。
以上、「電子カルテ」の導入には、費用はもちろんのこと院長および職員の膨大な労力が必要である。しかしながら、先述の如く20年後には50%以上の診療所に導入されることが予測される。「レセプトオンライン化」問題においては、オンライン化ができない為廃業を検討する医院まで出てきている。「電子カルテ」が大多数派になった時、「紙カルテ」医院が不利になるような制度にならないとも限らない。その様な先まで危惧しないまでも、「電子カルテ」に興味をお持ちの先生方は多いと思う。本号では、「電子カルテ」を実際に導入し、日常診療に使用している皮膚科の先生方に執筆をお願いした。会員の皆様の参考にしていただければと願っている。
おわりに
本稿の執筆に当たり、「電子カルテ」についての資料および助言をいただいた「病医院情報システム常設総合展示場メデイプラザ東京」6)のチーフアドバイザー蛯名沙由莉氏に深謝いたします。
「電子カルテ」導入に関する全てのデータは雑誌「新医療」の2008年9月号7)、10月号8)、11月号9)に発表されたデータを基に著者が再編集したものである。また、診療科は各医院の名前より推測したものである。また、雑誌にも但し書きがあるように、情報を公開していない企業もあり、これらの数字が実情と必ずしも一致しているとは限らない。また、本稿は企業を宣伝したり、いかなる企業も批判する目的のものではない。これから「電子カルテ」を導入しようと考えている皮膚科医の先生方が、現在の傾向をつかむ上で、わずかなりとも参考になればとの思いで執筆したものである。数字には一切の責任は持てないので、読者はあくまでも参考として読んでいただきたい。
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参考 |
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1)診療研究「レセプト、オンライン請求の光と影」442号:27-53、2008.11.
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2)m3.Com医師向けインターネットウェブサイト「電子カルテ」特集第1回、2008.12.10
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3)厚生労働省:医療施設動態調査(平成20年9月末概数)
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4)東京都医師会雑誌「第20回医療とITシンポジウム」61巻5号:531-535(20.6.15).
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5)厚生労働省:ホームページ:統計情報部「平成17年医療施設調査」. |
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6)メデイプラザ東京http://wwwmedi-plaza. com
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7)新医療「電子カルテシステム導入施設名簿、診療所編(Part1)」:184-194、2008.9. |
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8)新医療「電子カルテシステム導入施設名簿、診療所編(Part2)」:162-171、2008.10. |
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9)新医療「電子カルテシステム導入施設名簿、診療所編(Part3)」:127-135,2008.11.
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